前回、行動療法の本を読んだことを書きましたが、
【レビュー】荒田明香 藤原良己 渡辺格 著『最新 犬の問題行動診療ガイドブック』もう少し、動物の行動学について知りたいと思い、図書館で『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』を借りてみました。
この記事で本の内容をご紹介します。
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【おおまかな内容】
人間は他の動物を下等生物だと勝手にとらえて、上から見てしまいがちですが、この本全体を通して、著者のあらゆる生物に対する敬意を感じ、人間のあり方自体を考えさせられます。
特に、イエイヌは人間の都合で家に連れて来られた存在。
犬の暮らしをよくすることは飼い主の義務だとして、どうすれば愛犬を幸せにしてやれるのか、生態学や行動学の知識と実際のデータを交えた内容で、知見を深めてくれます。
統計データを元に書かれていて、現時点でわかっていないことは、はっきりとわからないと書いてあるので、内容としては信頼できると思います。
飼い主の個々の悩みに答えるような本ではないのですが、「『犬』をひとくくりに語ることは、大きな誤解を招く恐れがある(p.27)」とあります。
この本で犬を知り、愛犬を注意深く観察するようになることで、答えを自ら見つけられる飼い主になることがこの本の目的ではないかと私は思います。
【この本を読んで身につく知識】
「愛犬を幸せにしたい」と、飼い主ならみんながそう思っていると思いますが、では「犬の幸せとは何だろう?」という疑問が浮かびます。
この本を読めば、犬がどんな時に幸せを感じるのかのヒントを得られると思います。
ボリュームとしてはかなり多め。
一般的な飼い主が必要とする情報以上のことまで書いてあると思いますが、「それぞれが自分の犬の行動を研究する学生のように全力を尽くしてほしい(p.269)」とありますし、自分の犬が何を考えているのかを知る手立てになるのではないかと思います。
私自身は、愛犬や他の犬が吠えることにイライラを感じていましたが、この本を読んでからは、状況を分析することに夢中になってイライラすることがなくなりました。
また、生きづらい人間社会に生きる犬たちにもっと優しくありたいと考えるようになりました。
【印象的だった内容】
特に印象的だった文章をいくつか引用してご紹介します。
犬は常に自分の行動を自分で決め、「理由もなく」何かをすることはない。
マーク・ベコフ著『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』p.25
いわゆる問題行動に対して、理由がわからないからイライラして、感情のまま支配的になってしまう時ってあると思います。
そんな時でも、冷静に理由を考えてあげられたら、少なくともイライラせずに済むなぁと私自身、反省です。
詳しい研究によって遊びが社会性や体の発達に重要なことがわかっている。関節、筋肉、腱の発達や、有酸素および無酸素運動、認知機能の発達、ハプニングへの対応のトレーニングにもなる。
マーク・ベコフ著『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』p.94
私自身は、親の目を盗んで遊びに出かけていくような子供でしたが、犬でなくても、十分に遊んでいない子供は将来的に問題を抱えるだろうなと思っていたので、この一文を読んで遊びの大切さを改めて感じました。
犬を上手に遊ばせられる飼い主でいたいですね。
ピーター・クックらの研究から、犬が食べ物よりほめられることを好むのがわかった。
マーク・ベコフ著『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』p.188〜189
この本を読んでいる最中に、愛犬の肝臓の数値に微妙なところがあるとわかり、市販のおやつをあげるのをやめることに。
食べるのが大好きで、なでられるのは好きじゃない愛犬ですが、この文を読んで、ほめられることをもっと好きになってもらおうと思いました。
人はよく、トレーニングは一度だけのことだと思いがちだが、犬との暮らしは、時間とともに変化する願望と要求に対する交渉の連続なのだ。
マーク・ベコフ著『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』p.270
年月を重ねるごとに、心も体も変化していくのは、犬も人間も同じ。
それを意識して、その時々にカスタマイズした生活をしていくことが大切ですね。
私たちの教え方が、思いやりがあって礼儀正しいものなら、思いやりと礼儀を教えることができるはずだ。
マーク・ベコフ著『愛犬家の動物行動学者が教えてくれた秘密の話』p.282
私自身のことですが、愛犬が言うことを聞いてくれた時には「おりこう」と褒める以外にも「サンキュー!」とか「ありがとう」と言ったりもします。
言うことを聞かせる点では同じかもしれませんが、「言うことを聞け!」という姿勢とはメンタリティがちがうし、そういう部分を犬は感じ取るのかなと思っています。
思いやりと礼儀、対人でも、対犬でも、対自然でも、大切なことだと私は共感します。
【こんな人におすすめ】
犬という動物に対する理解を深め、愛犬を幸せにしてあげたいと思う人は読んでおいて損はない本だと思います。
この本には、「犬と飼い主の性格はお互いを写す鏡(p.240)」という言葉が出てきますが、愛犬を幸せにしたいのであれば、飼い主が幸せでいないといけない。
それは身勝手な思い込みではなく、愛犬への正しい理解があってこそ。
飼い主のやらなくちゃいけないことは、めっちゃ多いですけど(汗)、それを幸せに感じられる時、愛犬も幸せを感じてくれるのかなと思っています。